就業規則とは何か?
就業規則は労働基準法第89条により、常時10人以上の従業員を使用する場合、その作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。また、10人以上の従業員がいない場合でも、社内規程等が必要となる場面は多々あります。
「就業規則は必要ない!」
「下手に規則があるから逆に労働問題が発生するんだ!」
「社員には就業規則は見せたくないな」
上記のようなご意見を時々お聞きします。しかし、これは全く逆なのです。
事業主の「想い」を表現するもの
多くの事業主は、経営をされている中で、
「こういった会社にしたい!」
「こんな社風にしたい!」
「こんな人材がほしい!」
という想いを持たれています。この「想い」を文章で表現したものが「就業規則」なのです。
労使トラブルなどの問題は、会社の実情や事業主の想いが反映された内容になっていない就業規則だからこそ、生じやすいのです。
就業規則は会社を守る最後の砦!
会社とは関係のない日常生活において、法律を気にかける機会はめったに訪れません。
なにか問題が生じトラブルに巻き込まれ判断に迷った時に初めて「法律ではどうなっているのだろうか」と考えるものなのです。
就業規則にも同じことが言えます。
勤務中に、就業規則の内容を気にしながら働いている人はいないでしょう。
万一、トラブルが生じた場合は、法律(労働基準法)と就業規則を元に判断していくことになります。
しかしながら、法律(労働基準法)は、労働者を守る立場をとっており、会社を守ってくれるわけではありません。
会社を守ることができるのは、「就業規則」だけなのです。
モデル就業規則は役に立たない!
現在では、インターネット上に「モデル就業規則」が簡単にダウンロードできたり、書店で売られている本からでも簡単に手に入ります。
しかし、これらの「モデル就業規則」はいざという時に役に立つのでしょうか?
「モデル就業規則」はあくまでも法律を守った上で、汎用性を重視して作成されています。
つまり、業種・事業規模・従業員数などの会社の実情は全く考慮されておらず、事業主の「想い」は全く反映されていないのです。
会社を守るための大切な就業規則ですから、「既製品」で間に合わせるのではなく、会社の実態に合致した就業規則の作成が必要になってくるのです。
どんな就業規則にすればよいのか?
就業規則に、労働条件や従業員が守るべきルールを明確に定めることで、労務管理が万全となり労使トラブルは予防され、労使関係が良好・円滑に保たれます。
従業員からみても、労働条件や服務規律、懲戒自由が定められていることよって、どうすれば評価され、何をすれば懲戒処分となるのかがはっきりして、安心して働けることになります。
1. リスクが最大限に回避されていること
問題の一例を挙げてみましょう。
社員がいつまでもダラダラと残業を続け、残業代の支払いが増えて困っている
「残業」は会社の命令があって初めて成立します。社員が勝手に判断して仕事をした場合は残業ではありません。つまり、残業代は発生しないということを明確に定めましょう。
遅刻常習犯がいる
解雇も含めた「懲戒処分」の対象になります。就業規則にその旨を記載しないと処分はできません。
病気がちな社員がおり、頻繁に休んでしまい仕事にならない
休職扱いにして、しっかり病気を治してもらいましょう。休職の定めを設けることで、本人の意思と反していても休職を命じることができます。復職時や復職できなかったときの扱いも定めておきましょう。
退職したパートさんから突然退職金を請求された!
退職金の定めは明確に!支払対象者を明確に定めておかなければ、パートさんやアルバイトでも対象者とみなされることもあります。
無断欠勤が続いたので退職手続きをしたが、ある日突然出社してきた!
懲戒処分から退職に至るまでの基準を明確に定めましょう。懲戒処分の対象となる禁止行為を定め周知しておくことで、社員がそれらの禁止行為をすることを防ぐことにもなります。
2.現行法規に沿ったものであること
コンプライアンスが大切なのは言うまでもありませんが、法改正に沿っていない会社も多く見受けられます。
実は、法律の改正は頻繁にあります。毎年毎年確認作業を行うのは大変な労力がかかりますが、とても大切なことです。
3.新しい事例への対策が盛り込まれていること
一昔前では考えられなかった事例が数多く発生しています。
例えば、セクハラ、パワハラ、メンタルヘルス、ワークラフバランス、うつ病での休職等・・・。
なんとなく分かっているけれど、どうすればよいのかはっきり分からないことが多くあります。
休職の定めや社員教育、苦情処理窓口(担当者)を明確に定めておくことが重要です。